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オジ「次の曲、最初の10秒はギター一本でいきたい」
律「長くないですか?」
オジ「長い」
蓮「即答なんですね」
星羅「十秒間、ひとりで責任を取っていただくということでしょう?」
オジ「言い方」
佐夜「しかも最初の指示では、途中からギターが二人に増殖していました」
オジ「Sunoが勝手に増やしてん」
佐夜「指示に“Dual Guitars”と書いたのは誰でしたっけ」
オジ「……俺です」
律「自首した」
蓮「罪を認めるの早かったですね」
この曲は、そんな感じで始まった。
最初に決めたのは歌詞でもタイトルでもない。
**冒頭10秒。ギター一本。**
派手に速弾きするためではなく、一度聴けば「あの曲だ」と分かるフレーズを一本だけ置く。
そこからVerse 1に入った瞬間、
ギター。
ベース。
キーボード。
ドラム。
全部が一気に入る。
そこから最後まで、ほぼ減速しない。
今回作りたかったのは、迷いながら立ち止まる曲ではなく、”迷いを抱えたまま前へ進む曲”だった。
律「で、歌詞は何の曲なんです?」
オジ「正義」
律「重っ」
星羅「開始三秒で逃げましたわね」
律「いや、だって“正義の歌を作ります”って言われたら、普通ちょっと警戒するでしょ」
蓮「正義そのものを歌うんじゃないんですよね?」
オジ「逆やな。正しいって、そんな簡単なんか?って話」
佐夜「善行が必ず正義になるとは限らない。悪行が必ず罪になるとも限らない」
律「……それなら分かるかも」
ここで珍しく、律が少し黙った。
いつもなら先に何か言う。
だいたい余計なことも言う。
律「例えばさ」
オジ「うん」
律「誰かを助けようとして、別の誰かが困ることってあるじゃないですか」
佐夜「ありますね」
律「逆に、ルール破ったから助かった人もいる」
蓮「あるね」
律「だったら、“いいことをしたから正義です”って、誰が決めるんだろうって」
オジ「……それ使おう」
律「え?」
オジ「作詞参加」
律「今ので?」
オジ「今ので」
星羅「安い契約ですこと」
律「印税ください」
オジ「そこだけ急に現実的やな」
そこから今回の歌詞の芯が決まった。
最初に出てきたのが、
「差し伸べた手で 誰かを傷つけ」
という一行。
善意から始まった行為でも、結果まで善になるとは限らない。
そして、その逆もある。
「守った約束 未来を閉ざして」
「Break the rule, somebody lives」
守ること。
破ること。
正しいこと。
間違うこと。
言葉だけなら反対側に置ける。
でも現実では、そんなに綺麗に二列には並ばない。
律「でもこれ、“悪いことしてもいい”って歌にはしたくないです」
オジ「そこは違うな」
佐夜「善悪を否定する歌ではありません」
蓮「自分で考えることを放棄するな、ってことかな」
星羅「正義という看板を掲げれば、何をしても正しくなるわけではない。逆も同じですわね」
律「そう。それ」
オジ「今日めっちゃ作詞家やん」
律「今日だけみたいに言わないでくださいっ」
サビも最初は少し違っていた。
途中まで、
> 善を選べば 正義なのか
> Do the right thing, still someone cries
という形だった。
ただ、歌わせてみると少し詰まる。
英語と日本語の位置をひっくり返した。
そして残ったのが、この形。
> Choose the good — does that make it right?
> 正しくても 誰かが泣く
> Bear the guilt — does that make me wrong?
> 裁きを壊せ 線を越えろ
律「こっちの方が好き」
オジ「なんで?」
律「英語で問いかけて、日本語で現実が返ってくる感じする」
佐夜「……珍しく的確です」
律「珍しく!?」
蓮「今日は作詞家だから」
星羅「本日限定ですわ」
律「味方がいない、、、」
もう一箇所、最後まで引っかかったところがあった。
> 誰が決めた境界線
> Who gave the rule, who named the crime?
> 答えのないこの世界を
> Break it down — and choose your side
意味としては悪くない。
でも、歌わせると重い。
というより、詰まる。
しかも最後の `choose your side` は、この曲の考え方と少し矛盾していた。
善か悪か。
白か黒か。
どちらかを選べと言われること自体を疑っているのに、
最後に「どっち側につく?」と聞いてしまっていた。
なので、こう変えた。
> 誰が引いた そのライン
> Who drew the line, who named the crime?
> 答えのない この世界
> Break that line — make your own call
誰かの側につく。
ではなく。
自分で決める。
今回の曲は、最終的にそこへ着地した。
音の方はというと、最初の10秒がいちばん面倒だった。
オジ「ギター一本」
佐夜「はい」
オジ「一本」
佐夜「はい」
オジ「なんで二本鳴ってんねん」
佐夜「おじさんが“wide guitars”と書いたからです」
オジ「そこ拾う?」
佐夜「拾います」
蓮「AI、ちゃんと指示聞いてるじゃないですか」
星羅「むしろ人間側の問題ですわね」
律「有罪(ギルティ)」
オジ「今日のテーマに寄せてくんな」
最終的には、
ギターは一人。
最初の約10秒は完全に単独。
その後、Verse 1の頭からベース、キーボード、ドラムが一斉に入る。
そこからは全員フルパワー。
ドラムも途中で軽くならないよう、かなり重量寄りにした。
キックだけを硬くするのではなく、スネアの胴、フロアタム、ルーム感まで重くする。
いわゆる「速いロック」ではなく、
一歩踏むたびに床が沈むような速いロック。
そんな感じを狙っている。
ジャケットも、最初は5人を使う予定だった。
実際、一度作った。
格好はいい。
でも。
オジ「なんか普通やな」
佐夜「バンドの宣材写真としては成立しています」
オジ「でもこの曲じゃない」
佐夜「ですね」
そこで人物を全部消した。
最後に残ったのは、
天秤
鈍い真鍮色の、古い天秤。
左には白い羽。
右には黒い羽。
背景には、ぼんやりと天国と地獄。
でも、天秤は傾いていない。
完全に均衡している。
白い羽が正しいとも。
黒い羽が間違っているとも。
その絵は言わない。
律「これ、いいですね」
オジ「どっちが重いか決めてないからな」
律「決められない、じゃなくて?」
オジ「決めない」
少し間があった。
佐夜「……その違いが、この曲ですね」
『BREAK THE VERDICT』。
善を否定する歌ではない。
悪を肯定する歌でもない。
正義なんて存在しない、と言いたいわけでもない。
ただ。
誰かが書いた答えを、そのまま自分の正解にする前に。
一度くらい疑ってもいい。
誰かを救った手が、別の誰かを傷つけるかもしれない。
間違いだと思った選択が、誰かを救うかもしれない。
だったら最後くらい、自分で考える。
迷って。
間違って。
その代わり、自分で選ぶ。
> We make the choice — we pay the price.
律「……私、結構いいこと言った気がする」
オジ「最後に自分で言うな」
星羅「台無しですわ」
蓮「律らしくていいんじゃない?」
佐夜「はいはい。では作詞クレジットに“一部:律”と――」
律「本当に入るんですか!?」
オジ「知らん」
律「そこ一番大事!」
……正義について考えた曲の制作現場は、
最後までだいたいこんな感じだった。
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lyric
差し伸べた手で 誰かを傷つけ
Turn away, somebody survives
綺麗な正義が 影を隠して
Draw the line, then call it right
善か悪か who decides?
白か黒か choose a side
そんな二文字だけじゃ
この痛みまで裁けない
No perfect truth
No perfect lie
正しさだけを振りかざして
誰の声を消した?
Choose the good — does that make it right?
正しくても 誰かが泣く
Bear the guilt — does that make me wrong?
裁きを壊せ 線を越えろ
誰が引いた そのライン
Who drew the line, who named the crime?
答えのない この世界
Break that line — make your own call
守った約束 未来を閉ざして
Break the rule, somebody lives
汚れた両手を 罪と呼ぶなら
Tell me now — what justice is?
拍手の裏で 消えてく声
Truth gets buried under praise
多数の正解 並べたって
One wrong choice can still be brave
No spotless hands
No blameless side
善意だけじゃ救えない
命だってあるだろう
Choose the good — does that make it right?
正しくても 誰かが泣く
Bear the guilt — does that make me wrong?
裁きを壊せ 線を越えろ
誰かが書いた正解を
Don’t let the label choose your life
迷いながら選ぶなら
Stand your ground — and choose your side
救うことが 奪うことなら
守ることが 壊すことなら
What is good?
What is wrong?
誰がその意味を決める?
間違うことを恐れるな
Don’t surrender to the blame
正解だけを追いかけて
Lose yourself — or break the frame
Choose the good — does that make it right?
正しくても 誰かが泣く
Bear the guilt — does that make me wrong?
裁きを壊せ 線を越えろ
誰が引いた そのライン
Who drew the line, who named the crime?
答えのない この世界
Break that line — make your own call
善も悪も Good and evil, I keep
No clean hands, no perfect side
傷も矛盾も Take me there
We make the choice — we pay the price
答えのない世界なら
Don’t obey the scripted lie
正しささえ 打ち破れ
BREAK THE VERDICT
BREAK THE LINE

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