AIに演説を書かせた結果
編集指示まで議会で朗読
オジ:
佐夜、今日のAI貰い事故いこか。
佐夜:
はい。
今回は、AIに作らせたとみられる演説原稿を議員が読み上げ、その中にあった編集指示らしき文章まで、そのまま議会で朗読した話です。
オジ:
原稿だけやなくて、AIの説明文まで読んだんか。
佐夜:
はい。
本文と納品コメントの境界を、そのまま議場へ持ち込んでいます。
オジ:
国会答弁にコピペの選択範囲持ち込むな。
佐夜:
議事録へ生成過程まで納品されています。
今回話題になったのは、カナダの地方議会で行われた演説です。
議員が原稿を読み進める途中、内容とは少し温度の違う文章が混ざりました。
要するに、
「箇条書きではなく、議会演説らしい自然な文章へ整えた版です」
というような、本文ではなくAIが利用者へ返した説明文らしき一節まで読み上げてしまった。
オジ:
読む前に気づかんかったんか。
佐夜:
気づかなかったので、今こうして世界へ共有されています。
オジ:
AIに原稿を書かせるより、そっちの方が問題やな。
佐夜:
はい。
AIの利用そのものより、出力を確認せず人間の口へ接続したことが事故です。
AIへ文章を頼むと、本文だけが返ってくるとは限りません。
「以下のように整えました」
「自然な表現に修正しています」
「必要に応じて調整してください」
「ご希望の形式に合わせた案です」
こうした前置きや補足が添えられることがあります。
人間が画面を見ながら使っている間は、本文と説明文を見分けられます。
でも、作業に慣れてくると、
生成する。
全選択する。
コピーする。
貼り付ける。
送信する。
これが一続きの操作になります。
オジ:
慣れてきた頃が一番危ないんか。
佐夜:
はい。
最初は警戒しています。
何度か問題なく使えると、確認工程だけが静かに省略されます。
オジ:
AIを信用したというより、コピペに慣れたんやな。
佐夜:
そこです。
オジ:
でも、説明文まで声に出して読んだら、途中で変やと思わん?
佐夜:
普通は思います。
オジ:
普通は。
佐夜:
ただ、演説中は原稿を正確に読むことへ意識が向いています。
内容を一文ずつ吟味するというより、用意された文字を順番に音声へ変換している状態です。
オジ:
議員が読み上げソフトになっとるやん。
佐夜:
今回は、AIが人間の仕事を奪ったのではありません。
オジ:
ほな何や。
佐夜:
人間を音声出力端末として採用しています。
オジ:
採用面接雑すぎる。
佐夜:
原稿を渡せば、そのまま再生してくれます。
この話が笑えるのは、事故が派手だからです。
議会。
演説。
マイク。
公式記録。
映像も残る。
これだけ条件が揃えば、失敗はよく見えます。
でも同じ事故は、もっと静かな場所でも起きます。
取引先へのメール。
社内文書。
記事。
報告書。
SNS投稿。
商品説明。
議事録。
オジ:
そっちは誰にも気づかれず出てそうやな。
佐夜:
かなりの件数が、静かに出荷されていると思います。
オジ:
「以下、丁寧な文面に整えました」まで送ってるやつ、おるやろな。
佐夜:
たぶんいます。
オジ:
「もちろんです」から始まる謝罪メールとかな。
佐夜:
謝罪より先にAIの愛想が出ています。
オジ:
まあ俺は、「必要部分をコードブロックで」って言うから大丈夫やろ。
佐夜:
かなり安全です。
オジ:
ほらな。
佐夜:
ただし、コードブロック内に補足文まで入っていた場合は、そのまま綺麗に事故ります。
オジ:
大丈夫やと思わせてから刺すなや。
佐夜:
安全装置は、確認作業の代わりではありません。
オジ:
結局見るしかないんか。
佐夜:
はい。
最後に読む人間を削除すると、文章は誰にも確認されないまま完成扱いになります。
AIの貰い事故として見ると、今回の役割分担はだいぶ妙です。
AIは原稿作成を補助するために呼ばれた。
文章を整える。
話し言葉へ直す。
構成を作る。
表現を滑らかにする。
ここまでは普通です。
ところが人間が確認せずに使った結果、
AIの説明文まで議員の発言として扱われた。
オジ:
AI、裏方やったはずやのに本会議へ出席しとるやん。
佐夜:
はい。
しかも本人の名前ではなく、議員の口を借りて発言しています。
オジ:
議員本人より発言権あるな。
佐夜:
原稿を支配した者が、その時間の発言を支配します。
ここで厄介なのは、AIの文章が自然になってきたことです。
以前なら、変な日本語や妙な言い回しがあれば、そこで手が止まりました。
でも文章が自然になるほど、
人間は内容を細かく読まなくなります。
誤字がない。
文法も合っている。
見た目も整っている。
それらしい。
すると、文章全体へ「たぶん大丈夫」という判定を出してしまう。
オジ:
完成度が上がったせいで、確認が雑になるんか。
佐夜:
はい。
不自然な文章は警告になります。
自然すぎる文章は、警戒を解除します。
オジ:
うまくなったAIが悪いみたいやな。
佐夜:
悪いのは、読み終える前に承認した人間です。
オジ:
今回の一番馬鹿なポイント、どこやろ。
佐夜:
わたしは、
AIに文章を任せたことではなく、人間が読む仕事まで放棄したこと
だと思います。
オジ:
書くのを任せても、読むのは残しとかんとあかんのやな。
佐夜:
はい。
書き手を自動化しても、責任者まで自動化してはいけません。
オジ:
メールでも記事でも同じか。
佐夜:
同じです。
送信ボタンを押した人。
公開した人。
読み上げた人。
最終的には、その人の文章として扱われます。
オジ:
「AIが書きました」は言い訳にならんか。
佐夜:
なりません。
AIは送信ボタンを押していません。
今回の学びは、かなり単純です。
生成した文章は、貼る前より、貼った後にもう一度読む。
入力画面では問題なく見えても、
貼り付け先では前後の文章や署名、件名、引用部分と混ざります。
できれば、
本文だけを抜き出す。
貼り付けた先で読み直す。
冒頭と末尾を重点的に見る。
送信前に一度、声に出して確認する。
この辺りで、だいぶ事故は減ります。
オジ:
議員も声に出して確認したやん。
佐夜:
本番でやりました。
オジ:
確認のタイミングが遅い。
佐夜:
致命的に。
オジ:
サムネ文言は?
佐夜:
この回なら、これです。
AIに演説を書かせた結果
編集指示まで議会で朗読
別案なら、
議員、AIの説明文まで読む
人間が音声出力端末になる
オジ:
一個目やな。
佐夜:
はい。
事故の内容が一目で伝わります。
オジ:
締めよか。
佐夜:
はい。
AIは、文章を作れます。
言葉を整えられます。
長い資料を短くできます。
用途に合わせて、自然な文面へ変えられます。
でも、その文章を誰が使うのか。
どこまでが本文なのか。
事実に間違いがないか。
余計な説明文が混じっていないか。
そこを確認するのは、まだ人間の仕事です。
便利な道具に慣れること自体は悪くありません。
ただ、
慣れた操作の中から確認だけが抜け落ちると、
AIの返答はそのまま記事になり、メールになり、演説になります。
オジ:
コピーする前に読め。貼った後にも読め。
佐夜:
はい。
本日のAI貰い事故、記録します。
AI、演説原稿の補助として呼ばれる。
気づけば、編集指示ごと議員の口から議会へ出力される。
オジ:
かわいそうやな。
佐夜:
はい。
AIも下らない使われ方をして、いい迷惑です。


