AIで鳥を盛った結果
珍鳥発見ではなく編集ミス
オジ:
佐夜、今日のAI貰い事故いこか。
佐夜:
はい。
今回は、鳥の写真をAIで綺麗にした結果、別の鳥になってしまう話です。
オジ:
鳥の写真、ちょっと綺麗にしただけやろ?
佐夜:
はい。
羽の色まで綺麗にした結果、別の鳥になりました。
オジ:
美肌補正のノリで新種作るな。
佐夜:
鳥類学にビューティーフィルターを持ち込まないでください。
今回問題になっているのは、
野鳥写真に使われるAI補正です。
ピントの甘さを直す。
ノイズを消す。
枝や葉を取り除く。
暗い部分を見やすくする。
ここまでは、写真を少し整える作業に見えます。
ところが生成AIによる補正は、
元画像に存在する情報を整えるだけではありません。
足りない部分を推測し、
それらしい模様や色を新しく描き足すことがあります。
報道では、ブラジルで撮影されたムクドリモドキ科の鳥の写真をAIで加工したところ、その地域には生息していないハゴロモガラスに似た見た目へ変化した例が紹介されています。研究者らは、こうした画像が市民科学のデータベースへ入り込むことで、種の分布や渡り、生物多様性の研究を乱す危険があると警告しています。
オジ:
綺麗になったんやなくて、転職しとるやん。
佐夜:
はい。
撮影時は別の鳥だったのに、編集後は別種として出勤しています。
オジ:
鳥に無断でプロフィール変更するな。
佐夜:
所属科まで変わりかねません。
オジ:
シンシュモドキ科。
佐夜:
…。
オジ:
でも、写真だけなら笑い話で終わらん?
佐夜:
SNSへ載せるだけなら、まだ被害は限定的です。
問題は、その写真が
観測記録として登録される可能性があることです。
野鳥や昆虫、植物などの写真を投稿して、
どこに、いつ、どの生物がいたのかを共有する
市民参加型の科学データベースがあります。
研究者は、そこへ集まった大量の記録を使い、
種の分布。
渡りの変化。
個体数の増減。
気候変動による影響。
そういったものを調べています。
オジ:
ただの鳥好きの写真が、研究資料にもなるんやな。
佐夜:
はい。
一枚では小さな記録でも、数百万、数億件と集まれば大きな観測網になります。
iNaturalistでは約6億1,000万件の画像のうち、AI利用として報告されたものは約1,400件にとどまります。ただし、研究者らは実際の混入規模は把握できていないとしています。
オジ:
ほな、そこへ存在せん鳥が混ざったらあかんな。
佐夜:
はい。
珍しい発見ではなく、補正ソフトの創作かもしれません。
オジ:
でも、投稿した人も騙そうとしたわけちゃうんやろ?
佐夜:
そこが今回の厄介なところです。
露骨な偽物なら、まだ気づきやすいです。
南極にオウムがいる。
大阪城の上をペンギンが飛んでいる。
翼が六枚ある。
この辺りなら、さすがに疑えます。
オジ:
大阪城のペンギンは、ちょっと見たいけどな。
佐夜:
観光資源として考えないでください。
今回問題になるのは、
もっと地味な変更です。
羽の模様が少し違う。
目の周りの色が変わる。
本来隠れていた部分へ、AIが別種の特徴を描き足す。
投稿者自身は、
「ぼやけた写真を見やすくしただけ」
と思っているかもしれません。
オジ:
悪意ゼロで科学データ壊すんか。
佐夜:
はい。
善意の高画質化が、観測記録への偽装になります。
野鳥写真を扱うeBirdとMacaulay Libraryも、
軽いシャープ処理やノイズ除去は認めています。
ただし、実際の鳥の見た目を大きく変える補正や、
AIで新しく生成した画像は、種の記録として認めていません。
オジ:
線引きはされてるんやな。
佐夜:
はい。
ただ、人間側がどこまでAIに描き直されたか把握できない場合があります。
オジ:
「鮮明にする」ボタン押したら、勝手に羽を描き足すんか。
佐夜:
そういう可能性があります。
オジ:
それ、鮮明化やなくて想像図やん。
佐夜:
はい。
高解像度の推測です。
オジ:
AIの貰い事故としては、どこなん?
佐夜:
AIは、本来なら写真の整理、ノイズ軽減、資料作成、種の識別補助などに使える技術です。
オジ:
自然観察とも相性よさそうやけどな。
佐夜:
実際、うまく使えば役立ちます。
ただ今回は、
見えにくい鳥を見やすくする係として呼ばれたのに、気づけば存在しない特徴を追加する剥製師になっています。
オジ:
生きてる鳥をデジタル剥製にするな。
佐夜:
しかも学術資料として納品される可能性があります。
オジ:
業務事故が学会まで飛び火しとるやん。
佐夜:
はい。
AIも、映え写真を作ったつもりが、生息分布の改ざん容疑をかけられています。
この話の面白いところは、
人間が写真に求めるものが二つあることです。
ひとつは、
綺麗に見えること。
もうひとつは、
本当にそこにいた証拠であること。
SNSの写真なら、
多少明るくしたり、背景を整えたりしても、
大きな問題にはならないかもしれません。
でも観測写真は、
綺麗さより正確さが重要です。
オジ:
映える鳥と、記録される鳥は別なんやな。
佐夜:
はい。
観測記録に必要なのは、盛れた姿ではなく、撮れた姿です。
オジ:
鳥にも無加工証明写真が要るんか。
佐夜:
少なくとも研究用途では、だいぶ近いです。
オジ:
どう防いだらええんやろ。
佐夜:
まず、元画像を残すことです。
そして、
AI補正を使ったなら明記する。
種の特徴に関わる部分を生成補完しない。
観測データへ登録する写真は、加工を最小限にする。
珍しい種類に見えた場合ほど、元画像や別カットを確認する。
この辺りです。
オジ:
「珍鳥撮れた!」の前に、「補正切ったら何やった?」を確認せなあかんのか。
佐夜:
はい。
AIを解除した瞬間、普通の鳥へ戻る可能性があります。
オジ:
シンデレラみたいやな。
佐夜:
午前零時ではなく、編集履歴で魔法が解けます。
オジ:
今回のいちばん馬鹿なポイント、どこやろ。
佐夜:
わたしは、
写真を現実に近づけるための補正で、現実から遠ざかってしまったこと
だと思います。
オジ:
見やすくした結果、見たことない鳥になったんか。
佐夜:
はい。
画質は上がりましたが、信頼性は下がりました。
オジ:
解像度と事実性は比例せんのやな。
佐夜:
かなり重要なところです。
写真が鮮明。
細部も綺麗。
羽毛までくっきり。
だから本物とは限りません。
むしろ、
元画像には存在しなかった細部が
鮮明に描かれている可能性があります。
オジ:
見えすぎるのも怪しい時代か。
佐夜:
はい。
低画質は不便ですが、架空の羽を生やすよりは正直です。
オジ:
サムネ文言は?
佐夜:
この回なら、こうです。
AIで鳥を盛った結果
珍鳥発見ではなく編集ミス
または、
野鳥写真、AI補正で別種になる
美肌加工のノリで新種を作るな
オジ:
一個目やな。
佐夜:
はい。
導入の掛け合いとも綺麗につながります。
オジ:
締めよか。
佐夜:
はい。
AIは、写真を綺麗にできます。
暗い部分を明るくできます。
ぼやけた輪郭を補えます。
ただし、
その補った部分が、
現実に存在していたとは限りません。
SNSに載せる一枚なら、
「ちょっと盛れた」で終わるかもしれない。
でも、それが観測記録や研究データなら、
話は変わります。
そこに必要なのは、
見栄えのいい鳥ではなく、
本当にそこにいた鳥です。
オジ:
鳥を綺麗にする前に、鳥のまま残せってことやな。
佐夜:
はい。
本日のAI貰い事故、記録します。
AI、写真補正として呼ばれる。
気づけば、羽の模様を書き換え、存在しない珍鳥を科学データへ送り込む係にされる。
オジ:
かわいそうやな。
佐夜:
はい。
AIも下らない使われ方をして、いい迷惑です。


