FACE/OFF - Case: チ / テ -
第一話「トンチキは、なぜ焼けたのか。」
**一文字。
それだけで、世界は別人になる。**
午前九時十二分。
日本語保全機構。
会議室の空気は重かった。
机の中央に置かれた証拠写真。
そこには一枚の定食。
豚肉。
千切りキャベツ。
味噌汁。
主任が静かに口を開く。
「確認します。」
「これは。」
「トンチキです。」
部屋中がざわつく。
若い捜査官が恐る恐る言う。
「主任……それ、どう見てもトンテキです。」
主任は首を横に振った。
「昨日までは、トンチキだった。」
沈黙。
誰も笑わない。
笑える状況ではない。
ホワイトボードには二文字だけ。
チ
テ
「三日前。」
主任が続ける。
「この二文字が接触した。」
「接触……ですか。」
「ええ。」
「そして互いの意味を交換した。」
新人は思わず吹き出す。
「そんな馬鹿な。」
主任は資料を投げた。
ページには被害一覧。
チープ生活
↓
テープ生活
チーズ専門店
↓
テーゼ専門店
トンチキ野郎
↓
トンテキ野郎
新人の笑顔が消えた。
「……全部、成立してる。」
主任は小さくうなずく。
「だから厄介なんです。」
「犯人は。」
新人が尋ねる。
主任は静かに答えた。
「まだ分かりません。」
「ただ一つ。」
「“チ”は、自分から”テ”になろうとはしない。」
「つまり。」
「誰かが、入れ替えている。」
部屋の照明が一瞬だけ明滅した。
ホワイトボードを見る。
そこにあったはずの
チ
が消えていた。
代わりに、
テ
が一文字だけ、
こちらを見ていた。
To be …


