FACE/OFF - Case: チ / テ -
第二話「証拠文字」
第二話「証拠文字」
午前八時四十七分。
特殊文字犯罪対策課。
通称――C.I.B.
「全国で二十七件目の変異です。」
会議室の大型モニターに、被害一覧が映し出される。
大阪府。
チープホテル
↓
テープホテル
客室の壁一面。
ガムテープ。
養生テープ。
マスキングテープ。
布テープ。
ビニールテープ。
ありとあらゆるテープが、几帳面に分類されていた。
「コンセプトホテルか?」
新人がつぶやく。
支配人は首を振る。
「いいえ。」
「二日前までは普通のビジネスホテルでした。」
東京都。
チーズ専門店
↓
テーゼ専門店
店内では七人が腕を組み、真剣な表情で討論していた。
「存在とは何か。」
「ゴーダとは何か。」
「カマンベールは実在するのか。」
「……商品は?」
「一つも売れていません。」
愛知県。
チーム対抗運動会
↓
テーマ対抗運動会
赤組。
白組。
青春組。
そして、
「人生とは。」
主任は資料を閉じた。
「誰が参加したんです。」
「全員です。」
「優勝は?」
「哲学部でした。」
新人が頭を抱える。
「主任。」
「これ、本当に事件なんですか。」
主任は静かに一枚の写真を机へ置いた。
そこには、小さな名札。
『チ』
その裏返しには、
『テ』
「鑑識の結果です。」
「表面と裏面から、同じ指紋が検出されました。」
「同じ……?」
「ええ。」
「”チ”と”テ”は、同一人物です。」
部屋が静まり返る。
「つまり。」
主任がホワイトボードに二文字を書く。
チ
テ
そして、その間に一本の線を引いた。
「誰かが顔だけを入れ替えている。」
新人は息をのむ。
「フェイス……オフ。」
その瞬間。
警報が鳴り響く。
《緊急速報》
『全国のトンチキが、一斉にトンテキへ変異しました。』
会議室の全員が立ち上がる。
主任だけは動かない。
ゆっくりコーヒーカップを置き、小さくつぶやいた。
「……早すぎる。」
「もう、次の段階へ進んでいる。」
画面が暗転する。
次回予告
証拠品として保護された「テ」が姿を消した。
監視カメラに残されていたのは、一枚のメモだけ。
『私は犯人ではない。』
『次に狙われるのは――”チ”だ。』
第三話「容疑者・テ」


